▲東北大学名誉教授 吉田 武義氏 |
日 時: | 平成30年1月19日(金)14:00から15:30まで | ||||||||||||||||||||
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場 所: | 東京都千代田区二番町12-2 東京地学協会(地学会館)講堂 | ||||||||||||||||||||
参加者数: | 21名 | ||||||||||||||||||||
講演内容: |
東北日本弧は、古くて冷たいプレートの沈み込みに伴って形成された島弧海溝系の一つである。後期新生代に、ユーラシア大陸東縁部に位置した陸弧において、日本海盆や大和海盆などの背弧海盆が発達し、現在の東北日本の島弧が形成された。この東北日本弧の基本構造は、背弧海盆活動期に形成された複数のリフト構造(ホルスト-グラーベン)がその後、強圧縮応力場で転移した構造である。 東北日本弧の火成活動は、周囲のプレートとの相互作用や広域応力場の変遷、堆積盆の隆起・沈降などの構造発達史と密接に関連しており、マグマの活動様式やマグマ供給系の構造が、総噴出量やマグマ組成とともに時代的に変化している。この変遷に基づいて、東北日本弧の後期新生代における火成活動史は、活動的大陸縁の時代(66-21Ma)、背弧海盆の時代(21-13.5Ma)、島弧の時代(13.5-0Ma)、の3ステージに区分できる。 東北日本弧では、この間、一貫して沈み込み帯火成活動が継続しているが、マグマの噴出量はマントルや地殻の熱構造と応力場の状態に左右され、広域応力場が背弧海盆期から島弧期へと、引張場からニュートラルな場に変化するのに伴い、マグマ噴出量が急激に減少している。このとき、背弧側に火山活動の軸部があるリフト火山活動から、火山フロントから背弧側へと単調にアルカリが増加する通常の島弧で認められる火山活動へと変化している。 一方、マグマ組成は、陸弧期から、背弧海盆期、そして島弧期へと系統的に変化している。これはマグマ分離深度の変化を通して、マントルやその上に重なる地殻の温度構造や起源物質の配置と関係しているためと考えられる。すなわち、マントルにおける熱構造や対流パターンの変化に伴い、背弧海盆拡大期には背弧海盆玄武岩が大量に噴出し(玄武岩期)、それに続く島弧火山期の早期には、大量に発生した玄武岩の地殻への付加により、地殻が加熱され、一部溶融することにより、多くの珪長質深成岩体やカルデラの活動が起こっている(流紋岩/花崗岩期)。それに続く島弧火山期の後期には、それまでの北東-南西方向の横ずれ運動の場から、東西方向の逆断層の場に変わり、カルデラ主体の火山活動が、安山岩質成層火山主体の火山活動期(安山岩期)に変化している。 東北日本がニュートラルな応力場から強い圧縮応力場に変化するとともに、火山活動は少量の玄武岩と多数の陥没カルデラを形成する活動から、カルクアルカリ安山岩を主とする成層火山主体の活動へと変化し、青麻・恐、脊梁、森吉、鳥海の4列の火山列が出現する。カルデラ火山の多くは 1Ma 前後に活動を終えているが、脊梁山脈沿いの安山岩質成層火山の多くは、1.5Ma 前後に活動を開始し、0.6~0.5Ma 以降、強い東西性圧縮応力場の下で、噴出率がそれまでの2倍以上に増加している。この増加は、上部地殻の冷却と強い水平圧縮応力の作用によって、マントルで発生した苦鉄質マグマと地殻に滞留していた珪長質マグマとが混合して大量の安山岩マグマが生じ、多数の成層火山を形成したためと考えられる。 このように、沈み込み帯での火成活動は、その構造発達史と密接に関連しながら、その様相を大きく変化させている。 | ||||||||||||||||||||
参考資料: |
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意見交換: | 講演後、会場と演者で次のような意見交換があった。
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